抜打ぬきうち)” の例文
旧字:拔打
永禪は不図ふとうしろに火縄の光るのを見て、此奴こいつ飛道具とびどうぐを持って来たと思うからずーんと飛掛り、抜打ぬきうちに胸のあたりへ切付けました。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
巨獣の斑紋はんもんのように二筋三筋キラリと光って、夏の富士にして始めて見るところの、威嚇いかく的な紫色が、抜打ぬきうちに稲妻でもひらめかしそうに、うつぼつと眉に迫って来る。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
一四〇さるから兄長このかみ、何故此の国に足をとどむべき。吾、今信義を重んじて態々わざわざここに来る。汝は又不義のために汚名をめいをのこせとて、いひもをはらず抜打ぬきうちに斬りつくれば、一かたなにてそこに倒る。
相役聞きも果てず、いかにも某は茶事の心得なし、一徹なる武辺者ぶへんものなり、諸芸に堪能なるお手前の表芸おもてげいが見たしと申すや否や、つと立ち上がり、旅館の床の間なる刀掛より刀を取り、抜打ぬきうちに切つけ候。
と倒れて起上ろうとする所を、早く大刀のつかに手をかけると見えましたが抜打ぬきうちに織江の肩先深く切付けたから堪りません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実に文武兼備と講釈師ならほめる立派な殿様でございますなれども、そこはお大名の疳癪で、ひどく逆らって参ると、すぐ抜打ぬきうちに御家来の首がコロリなどゝいう事が有るもので
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ガバ/\/\と泡のような物を吐いて土をむしり木の根方へ頭をこすり附けて横っ倒しにたおれるのを見て、怪しの侍が抜打ぬきうちにすうと犬の首を斬落きりおとして、懐から紙を取出し、すっかり血をぬぐ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うかゞう傳助の素頭すこうべを、すぽんと抜打ぬきうちにしましたが、傳助はい面の皮。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)