かつ)” の例文
つなぎ合せて肩をおおえる鋼鉄はがねの延板の、もっとも外に向えるが二つに折れて肉に入る。吾がうちし太刀先は巨人の盾をななめってかつと鳴るのみ。……
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
図書介の木剣をかつと叩き落したが、それと同時に自分の木剣もぽろっととり落した、「まいった」「まいった」二人はほとんど同時に叫んだが
薯粥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
きょうはまぶしいほどに晴れた日で、わたしは雲雀ひばりの歌を聴きながら、乗馬靴に調子を取ってかつかつとあたる帯剣の音を聴きながら、牧場を乗りぬけて行きました。
笑い興じていると、すぐ下の河原のふちで、馬蹄ひづめの音が、かつっ——と石に響いた。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盈々なみなみと酒をれたる二つの猪口は、彼等の目より高く挙げらるるとひとしかつ相撃あひうてば、くれなゐしづくの漏るが如く流るるを、互に引くより早く一息ひといきに飲乾したり。これを見たる佐分利は甘糟の膝をうごかして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かつ! と槍が相撃った、降る雪と、足下から舞いあがる雪とで、一瞬ふたりの姿は見えなくなり、次いで
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「生きておるか」とシーワルドが剣で招けば、「死ぬところじゃ」とウィリアムが高く盾を翳す。右にそばだつ丸櫓の上より飛び来る矢がかつと夜叉の額をかすめてウィリアムの足の下へ落つる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かつ、戞、戞、戞
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごくしぜんに充分引き絞ると、ふっと射て放った。びゅっ、電光のように飛んでいった矢は、四寸の的のまんまん中に当ってかつ! みごとに矢竹半ばまで射抜いてしまった。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かつと打つは石の上と心得しに、われより先にたおれたる人のよろいの袖なり
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)