えびす)” の例文
えびす橋……相手の男まで知ってるわ。首知ってるどころじゃない。名前をいえば、針が足の裏にささったより、まだ飛び上るわよ」
夜光虫 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「十日えびすの、売り物は」上りはなの二帖へいって、重吉は外を眺めながら、調子の狂った節で低くうたいだした、「——はぜ袋にとり鉢、銭かます、小判に金箱」
ちゃん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大阪南えびす橋松竹出演中で、浪花釣友会会長魚橋信夫氏に、南海電鉄全線無料乗車券を十日間分いただいたので、副会長神田彦平氏ほか大阪釣友と南海線一番五時発の電車に乗る。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
天井から「えびす」または「大黒だいこく」と呼ぶ欅作けやきづくりの大きな釣手つりてを下げ、それに自在じざいを掛けます。そのかぎの彫りに実に見事なものがあります。好んで水にちなんだものや、吉祥のしるしを選びます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その神様の種類からいえば、先ず店の間の天照皇太神宮てんしょうこうたいじんぐうを初めとし、不動明王ふどうみょうおう戸隠とがくし神社、天満宮てんまんぐうえびす大黒だいこく金比羅こんぴら三宝荒神さんぼうこうじん神農しんのう様、弁財天、布袋ほてい、稲荷様等、八百万やおよろずの神々たちが存在された。
だがそいつはちょっとくらいつけるぜ、そうなんだ中将、石山に石のあるくれえたしかなんだ、……えびす町に持木屋成助もちきやなりすけてえ両替みせがあるだろう、あれと西浜の来六屋出平きろくやでへいてえ納屋貸なやがし(倉庫業)とは
針助はゆっくりした足取りで、えびす橋通を北へ真っ直ぐ、電車道へ出ると、地下鉄の入口の灯が夜光虫のように夜のとばりの中で、ひそかに光っている上本町六丁目行きの停留所の方へ、折れて行った。
夜光虫 (新字新仮名) / 織田作之助(著)