慷慨家こうがいか)” の例文
「なにあれでも、実は慷慨家こうがいかかも知れない。そらよく草双紙くさぞうしにあるじゃないか。何とかの何々、実は海賊の張本毛剃九右衛門けぞりくえもんて」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
てきぱきした実務家の冉有ぜんゆう。温厚の長者閔子騫びんしけん穿鑿せんさく好きな故実家の子夏しか。いささか詭弁派的きべんはてき享受家きょうじゅか宰予さいよ気骨きこつ稜々りょうりょうたる慷慨家こうがいか公良孺こうりょうじゅ
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
いや、はや、慷慨家こうがいかの寄り集まりで、仏人からそう申しても、ぜひ切ると言った調子で、聞き入れません。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのほかに、久留米の神主で、あの慷慨家こうがいか真木和泉まきいずみが加わる、それから中山卿のお附であった池、枚岡ひらおか、大沢の三人——中山卿は長州でくなられたそうじゃ。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、負けぬ気の殿と、慷慨家こうがいかで壮年の公卿くげ様との対局は、わざを別にして興のある碁敵ごがたきだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は奇妙な慷慨家こうがいか肌の男で、熱してくると、いつか眼にいっぱい涙を持っていた。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
慷慨家こうがいかの金子は、翼なき身を口惜しむように、足摺あしずりしながら叫んだ。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
さればこそ、勿論長門守は、江戸大公儀の慈悲あるその処断を感泣しないまでも内心喜んで御受けしただろうと思われたのに、変り者と言えば変り者、慷慨家こうがいかと言えば一種気骨に富んだ慷慨家です。
これに由って見るに、楓江は奇骨稜々りょうりょうたる青年にして、ただに詩文を善くしたのみならず武芸にも達していたが慷慨家こうがいかを以て自ら任じ仕官の道を求めなかったので赤貧洗うが如く住所も不定であった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
慷慨家こうがいかの弥兵衛は、もとより黙っていない。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「なある。貢五郎と云うのはだいぶ慷慨家こうがいかで、維新の時などはだいぶばれたものだ——或る時あなた長い刀をげてわしの所へ議論に来て、……」
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)