意気込いきごみ)” の例文
旧字:意氣込
泥棒の足の早さも抜群ですが、二十七歳の若さを、忿怒と驚愕に燃えさかる、井上半十郎の意気込いきごみの凄まじさもと通りではありません。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
またこう書けばこそ下らなくなるが、その当時のぼんやりした意気込いきごみを、ぼんやりした意気込のままに叙したなら、これでも小説の主人公になる資格は十分あるんだろうと考える。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
文壇に乗出したそもそもの初めこそ小説を生涯の使命とする意気込いきごみがあったらしいが、人気が去ってからは他の仕事に転々して、最後に再び文壇に舞戻った時はう時代に遅れてしまって
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
警察が干渉でもしなければ一日でも喋舌しやべり続けようとする意気込いきごみを見せた。
れまず口を開いていう「人もしなんじに向いて言詞ことばを出さば汝これをいとうや、さりながら誰か言わで忍ぶことを得んや」と。以て神の道のためには弁ぜざるを得ずとの、彼の意気込いきごみを知るべきである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
サアこの小便をけて左右に道を開くか、何かとがめ立てしてくって掛るか、ここが喧嘩の間一髪、いよ/\かかって来れば五人でも十人でもほうり出して殺して仕舞しまうと云う意気込いきごみが、先方の若武者共にわかったか
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
津田の疑問と清子の疑問が暫時ざんじ視線の上で行き合ったあと、最初に眼を引いたものは清子であった。津田はその退かたを見た。そうしてそこにも二人の間にある意気込いきごみの相違を認めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)