いたま)” の例文
旧字:
と彼は微笑して言った、その眼元めもとには心の底にひそんで居る彼のやさしい、正直な人柄の光さえ髣髴ほのめいて、自分には更にそれいたましげに見えた、其処そこで自分もわらいを含み
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
抜け出ている女の頸足えりあしと、それへ崩れてもつれかかって、揺れている女の後れ毛とを、いたましくも見えればなまめかしくも見える、そういうように照らしていて、その下に蒼白の色をした
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
廿六の彼は、初めて彼女の志を入れ、終世を共にするちかいを結んだのだが、成恋の二人の間には、いたましい失恋の人があって、その人の誠心まごころが綾之助の幸福のために仲人となってくれたのだった。
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)