惜気をしげ)” の例文
旧字:惜氣
都督の辞令を受取つた中将は、やつとこの頃似合ふやうになつた背広服を、惜気をしげもなく脱ぎ捨てて早速中将の軍服に着替へようとした。
金剛石ダイアモンドと光を争ひし目は惜気をしげも無くみはりて時計のセコンドを刻むを打目戍うちまもれり。火にかざせる彼の手を見よ、玉の如くなり。さらば友禅模様ある紫縮緬むらさきちりめん半襟はんえりつつまれたる彼の胸を想へ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
にははしらにもなるべき木を惜気をしげもなくたきたつる火影ほかげてらすを見れば、末のむすめは色黒いろくろ肥太こえふとりてみにくし。をり/\すそをまくりあげて虫をひらふは見ぐるしけれどはぢらふさまもせず。
見ると、羊の革を幾枚か貼重はりかさねて、裏一面に惜気をしげもなく金箔を押したものなのだ。
やつと旅屋やどやを見つけて、泊り込むと、直ぐと南京虫がちくちくしに来るので、とても寝つかれない。留学費のなかから買込むだ大缶おほくわん蚤取粉のみとりこを、惜気をしげもなくばらいてみたところで一向利き目が無い。