惚々ほれ/″\)” の例文
その日は河内家かはちや総見そうけんがあつたので、肝腎のかあは皆と一緒に場に坐つて、惚々ほれ/″\吾児わがこの芸に見とれて、夢中になつてゐた。
主人の弟の佐野松は、二十歳はたちを越したばかりの、こいつは本當に光る源氏のやうな男で、相手は間違ひもなく男と知りながら、本當に惚々ほれ/″\しますよ
みね「お國さんの事をサ、い女だとね、年は廿七だそうだが、ちょっと見ると廿二三にしか見えない位な美いで、私も惚々ほれ/″\するくらいだから、ありゃア惚れてもいゝよ」
何時いつ惚々ほれ/″\として了ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
何でもないそのことばが皆の耳にはまるで音楽のやうに聞えたので、居合はせた人達は惚々ほれ/″\した眼つきで女の口元を見た。
「縁側で背伸をすると、土手を歩いてゐるお前の姿がよく見えたよ、——若い娘と摺れ違ふたんびに、一々振り返つて、惚々ほれ/″\と眺めるのだけは止せよ。見つともないからな」
「そや/\。確かさうやつたなあ。」と鉄斎翁は惚々ほれ/″\にせに見とれてゐた。「わしもあの頃は達者にいたもんや、とても今はこんな真似は出来上でけあがらんて。」
そしてその晩も、あくる晩も、また翌る晩もその石碑のもとに野宿をして、じつと石碑の文字に惚々ほれ/″\してゐるので、馬はとうと腹を立てて、其処そこらくさぱらにごろり横になつた。