もど)” の例文
見てもどかしげに「貴方は其を疑いますか、若し宝を隠す為でなければ何の為に此の様な、人の出入る事の出来ぬ塔を立てたとおおもいなさる」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
うぞ其後そのあとを、それから、」とには他事たじをいふうちがもどかしく、にべもなくつゞきうながした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それがもどかしくて堪らなかったから、この場合、火蓋を切ろうとするのを山崎が抑えました。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
『何で御座いますか、私に出来る事なら……。』と智恵子は何時になくもどかし相な顔をした。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
つい眼の前の物に手の届かぬようなもどかしい感じが残るばかりである。
イタリア人 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もどかしがり「到底逢わぬ訳には行きますまいが、兎に角、暫し他の室に避け心を落ち着けて夫からお逢いなさい、ソレ斯う云う中に最う彼処へ遣って来ますよ」
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)