怖々おづおづ)” の例文
忠一といふ、今度尋常科の三年に進んだ校長の長男が、用もないのに怖々おづおづしながら入つて来て、甘えるやう姿態しなをして健のつくゑ倚掛よりかかつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ふと異しい物音がした、キキと何かを引つ掻くやうな、……と思ふとまた性急に、然し怖々おづおづと、否寧ろ時折は粗雑がさつ四肢よつあしで引つ掻きちらす悪戯いたづらな爪の響——それが絶間もなくキキとキキと続いてくる。
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『ハ?』と、安藤は目を怖々おづおづさして東川を見た。意気地なしの、能力はたらきの無い其顔には、あり/\と当惑の色が現れてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
怖々おづおづと、怖々おづおづと、……まぶしげにをふくらませ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『竹山さん。』と、遂々たうたうこらへきれなくなつて渠は云つた。悲し気な眼で対手を見ながら、顫ひを帯びて怖々おづおづした声で。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
みどり兒は怖々おづおづと、あちら向きつつ蟲を
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
善は急げと、其日すぐお由の家に移転うつつた。重兵衛の後にいて怖々おづおづ入つて来る松太郎を見ると、生柴なましば大炉おほろをりべてフウフウ吹いてゐたお由は、突然いきなり
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
怖々おづおづと投げいだし、眠りたるたましひ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、校長は両手を邪魔相に前で揉みながら、低い、怖々おづおづした様な声で語り出した。二分も経つか経たぬに
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)