こころ)” の例文
人にわが不平を訴えんとするとき、わが不平が徹底せぬうち、先方から中途半把ちゅうとはんぱ慰藉いしゃを与えらるるのはこころよくないものだ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
朝廷においてはその権のなかばを譲りたまうことなれば、こころよく許可したまうべきやいなや、いまだ知るべからず。
そして犬の血のついたままの脇差を逆手さかてに持って、「お鷹匠衆たかじょうしゅうはどうなさりましたな、お犬牽いぬひきは只今ただいま参りますぞ」と高声たかごえに言って、一声こころよげに笑って、腹を十文字に切った。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すると右手の絵馬堂からこころよさそうないびきの声が二人の耳へ聞こえて来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私はこころよくそれらの青年に接した。そうして彼らの来意をたしかめた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)