御維新ごいっしん)” の例文
代助の父は長井得ながいとくといって、御維新ごいっしんのとき、戦争に出た経験のある位な老人であるが、今でも至極達者に生きている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが御維新ごいっしんこのかた時勢の変遷で次第に家運の傾いて来た折も折火事にあって質屋はそれなりつぶれてしまった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
えゝ浅草の三筋町——俗に桟町さんまちという所に、御維新ごいっしん前まで甲州屋と申す紙店かみやがござりました。主人あるじは先年みまかりまして、お杉という後家が家督あとを踏まえてる。
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時も丁度御維新ごいっしんの、得意筋の幕府大奥や、諸大名の奥向きというところがなくなったので、祖父も店をやめてしまって、あたしが生まれたころには、もはや祖父卯兵衛は物故し
点火頃ひともしごろに帰って来て、作、喜べと大枚三両。これはこれはとしんから辞退をしたけれども、いや先方様さきさまでも大喜び、実は鏡についてその話のあったのは、御維新ごいっしんになって八年、霜月の十九日じゃ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おれ今でこそ車を引いてるが、元は大久保政五郎おおくぼまさごろうの親類で、駈出かけだしの賭博打ばくちうちだが、漆原うるしはら嘉十かじゅうと云った長脇差ながわきざしよ、ところが御維新ごいっしんになってから賭博打を取捕とっつかめえては打切ぶっきられ
君は大禄たいろくを取り、僕は小身しょうしんもの、御維新ごいっしんのち、君は弁才があって誠しやかにういう商法をれば盛大に成ろうと云うから、僕が命の綱の金を君に預けた所、商法ははず
江戸町々の豪商ものもちはいうまでもなく、大名方の贔屓ひいきこうむったほどの名人で、其のこしらえました指物も御維新ごいっしん前までは諸方に伝わって珍重されて居りましたが、瓦解がかいの時二束三文で古道具屋の手に渡って
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)