御役おやく)” の例文
いはゆる公儀の御役おやくに立たうといふごく單純な考へであつた。然して此心は大抵な人が皆同じであつたらうと思つて居る。
兵馬倥偬の人 (旧字旧仮名) / 塚原渋柿園塚原蓼洲(著)
昔は自分なぞよりはもう一層たちの悪い無頼漢ならずもののようにも思っていた遠山金四郎とおやまきんしろうが今は公儀の重い御役おやくを勤め真実世の有様を嘆き憂いているかと思えば
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今年は麹町の年番で、一丁目から十三丁目までの町家が御役おやくになってこれが大変なはずみよう。
本陣世古六太夫せころくだゆうの離れ座敷に、今宵の宿を定めたのは、定火消じょうびけし御役おやく酒井内蔵助さかいくらのすけ(五千石)の家臣、織部純之進おりべじゅんのしんという若武士わかざむらいで、それは酒井家の領地巡検使という役目を初めて承わり
丹那山の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「あたら御役おやくに立つ侍を一人、刀のさびに致したのは三右衛門の罪でございまする。」
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さしいそがせられすでに伊豆守殿御屋敷おやしき御玄關おげんくわんへ懸て奉行ぶぎやう越前守伊豆守殿へ内々ない/\御目通おめどほり致度と申入るに取次の者此趣このおもむきを申上ければ伊豆守殿不審ふしんに思はれ奉行越前は昨夜さくやの内に御役おやく御免を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
守るなよこの三人は予が眼鏡めがねに止りし者なれば屹度きつと御役おやくに立者なり必ず/\此一言をわするゝな次右衞門三五郎等歸府きふなさば此遺言このゆゐごんを申し聞すべしと言又家中一同の者へ其方共予がなきあとは三日を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)