得言えい)” の例文
お登和嬢何事も得言えいわでただサメザメと泣いている。忽ち大原家より駆け出したるお代嬢、四辺あたりを見廻して大原の姿を見付け「満さーん、其処そこであにしているだ」
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
またまゝむすめ紛紜もめでもおこりましたのか、せまひとなれば何事なにごとくちには得言えいはで、たんとむねいたくするがひと性分しやうぶんこまりもので御座ござります、とてわざとの高笑たかわらひをしてかせれば
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
嫂は物も得言えいわず、ただうちふるえて兄の身体をゆすぶっていましたが、百合子が「姉さん、しっかりして頂戴」と後からささやきますと、そのままとうとう百合子の腕の中に気を失ってしまいました。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)