弓張月ゆみはりづき)” の例文
それは雪中にたぬきの歩いて居る処で、弓張月ゆみはりづきが雲間から照して居る。狸を真中に画いてその前後には枯茅かれかやの如きものに雪の積んだ処があしらつてある。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
馬琴の作るところ、長篇四五種、八犬伝はっけんでんの雄大、弓張月ゆみはりづきの壮快、皆江湖こうこ嘖々さくさくとして称するところなるが、八犬伝弓張月に比してまさるあるも劣らざるものを侠客伝きょうかくでんす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
馬琴ばきんの『弓張月ゆみはりづき』にまで書かれている勝連按司かつれんあじ阿麻和利あまわりは、沖縄の歴史の上で、すっかり悪者にされてしまっているが、これは伊波普猷いはふゆう君などが早くから注意したように
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
馬琴ばきん弓張月ゆみはりづきにも、露伴の二日物語にも、白峯は書かれている。けれど雨月物語の「白峯」には及ぶべくもない。秋成はあの作品で、自分が作中人物の西行になりすましている。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はこの机の上で、弓張月ゆみはりづきを書き、南柯夢なんかのゆめを書き、そうして今は八犬伝を書いた。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それでもわたしはここの舞台で「弓張月ゆみはりづき」の濛雲国師もううんこくしや、「扇屋熊谷おうぎやくまがい」の姉輪平次や、「ふたおもて」の法界坊や、「腰越状こしごえじょう」の五斗ごとうや、「廿四孝にじゅうしこう」の横蔵や、「太十たいじゅう」の光秀などを見た。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本棚の片隅には、帙入ちついりの唐本の『山谷さんこく詩集』などもありました。真中は洋書で、医学の本が重らしく、一方には馬琴ばきん読本よみほんの『八犬伝』『巡島記』『弓張月ゆみはりづき』『美少年録』など、予約出版のものです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
彼はこの机の上で、弓張月ゆみはりづきを書き、南柯夢なんかのゆめを書き、さうして今は八犬伝を書いた。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)