弑逆しいぎゃく)” の例文
さきつ年、久秀が室町の御館おやかたおそうて、将軍義輝公を弑逆しいぎゃくし奉った折なども、坂上主膳の働きは、傍若ぼうじゃく無人ないくさぶりと云われております。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と云うのはあなたがやりそこない、中納言様の弑逆しいぎゃくに、失敗したからでございますよ。不埓ふらちな八重梅! 無能者め! などとおっしゃってでございます。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もし暴君暗相ありて虐政を行なうときは万民のこれに対する手段はただ弑逆しいぎゃく放伐あるに過ぎず。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
ことによるとこの青年は、その父の大公一家が、廃帝と同じ運命の途連みちづれにされたことを推測しているか……もしくは、その大公の家族の虐殺が、廃帝の弑逆しいぎゃくと誤り伝えられている事を
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ヴァルミーにては将軍であり、ジュマップにては兵卒であった。(訳者注 両地とも一七九二年フランス軍がオーストリア軍を破りし地)。八度弑逆しいぎゃくが試みられ、そして常にほほえんでいた。
そして、その大塔ノ宮弑逆しいぎゃくの一事は、たとえ直義がやったにせよ、尊氏の大逆といわれても、いいのがれるすべもなかった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弑逆しいぎゃくいたそうと致しましたので、あの時お渡ししたあの薬、眠剤でなくてまさしく砒石ひせき! 事が破れてあなた様がご浪人なすったと知った時、いやアな気持ちが致しました。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信長公を弑逆しいぎゃくし奉ったなどとは……。大逆の乱を起して洛内を合戦のちまたにしておるなどとは……。夢か、天魔でも魅入みいったか。信じられぬのだ。
臣として主を弑逆しいぎゃくするなどということは、この紹巴じょうはのあたまには考えようとしても考えられぬ。たとえ変だと気づいても自分の道義が合点しません。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……正成にとり、宮は笠置かさぎいらい、苦憂も末の愉しみも共にしてきた無二の御知己。それをついに弑逆しいぎゃくし奉った足利兄弟は、とりも直さず正成のあだ。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たった今、主人信長を弑逆しいぎゃくした光秀すら、信忠から書を以て、親王の御移徒ごいしを仰いだうえで決戦せんとの申し入れには、欣然きんぜん、応諾の旨を答えている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やむなきばあいには、先帝を弑逆しいぎゃくし奉ることもぜひがない。四民のためだ。天下を静謐せいひつするためにはだ。それの手段は、そちの分別にまかせておく」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まずおれたちを配所から遠ざけておき、一令いつでも弑逆しいぎゃくしたてまつるための支度であるまいか
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弑逆しいぎゃくの一事にかなぐり捨て、つねに政治的に、またつねにじれったい、兄の態度をして
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
公を弑逆しいぎゃくするの機をとらえた彼の頭のはたらきは、まことに賢いものだというほかはない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたは、お若い時から、万巻の書を読んだ! じゃが、あの書のたった一行にでも、主君を弑逆しいぎゃくしてもよいと申す文字がござりましたか。またあなた様は、生来の御聡明じゃ。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大塔ノ宮弑逆しいぎゃくの一事も、勅答の一条も、はや、やってしまった後のまつりだ。いまさらどうなるものではない。またそちの悪意でもなく、みなこの尊氏を思ってしてくれたことではある。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝臣を弑逆しいぎゃくすれば、理非にかかわらず、叛逆の賊子といわれねばならぬ。それに、董卓には、この大軍があるのだ。われわれも共に、ここで斬り死しなければならぬ。聞きわけてくれ張飛。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
将軍義輝よしてる弑逆しいぎゃくしてから、柳生宗厳むねとしは、彼にもすっかり望みを断って
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大塔ノ宮弑逆しいぎゃくの不逞をあえて犯したことだ」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)