廂屋根ひさしやね)” の例文
はツとおもつたのは、すさまじいおとで、はた、とおとした團扇うちはが、カラ/\とつて、廂屋根ひさしやねかはらすべつて、くさなかちたのである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
酒館の窓から廂屋根ひさしやねの尖端へおどり出した一箇の怪漢が、片手には剣、片手にこぶしを振りあげて大音声をふりしぼった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風入かぜいれのまども、正西まにしけて、夕日ゆふひのほとぼりははげしくとも、なみにもこほりにもれとてさはると、爪下つました廂屋根ひさしやねは、さすがに夜露よつゆつめたいのであつた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むきの二階の肱掛窓ひじかけまどを開けて、立ちもやらず、坐りもあえず、あの峰へ、と山に向って、ひざを宙に水を見ると、肱の下なる、廂屋根ひさしやねの屋根板は、うろこのようにおののいて、——北国の習慣ならわし
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)