広濶こうかつ)” の例文
旧字:廣濶
、これは長時間太陽光線を遮るので、スウェーデンのもっと広濶こうかつな乾燥している土地ほど健康に適するとは思われないのである。
非常に広濶こうかつな、偏執のない心が、あらゆる対象へ差別のない愛を注ぎながら、静かに、なごやかに、それらを見まもっている、——そういう印象を与える。
享楽人 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
理知がなかったら、彼女は醜いと見えるかもしれなかった。そしてこの理知が、クリストフの心をよろこばせた。彼は彼女を実際以上に広濶こうかつ自由であると思った。
風力を測る器械の側で、技手は私に、暴風雨あらしの前の雲——たとえば広濶こうかつな海岸の地方で望まれるようなは、その全形をこの信濃しなのの地方で望み難いことを話してくれた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
転じて山の手方面では谷中やなか諏訪すわの台、諏訪明神社前の崖上、ここにも掛茶屋があって、入谷、日暮里にっぽり田圃たんぼ越しに遠く隅田川、紫がかった筑波の姿まで眼界広濶こうかつ、一碗の渋茶も嬉しい味
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
この辺は、非常に広濶こうかつで、ところどころに「熔岩のとげ」と呼ばれる、仙人掌のような恰好をした黒い塩基性の熔岩塔が立っているので、ちょうど、メキシコの沙漠の中にでもいるような気がする。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
して忌憚きたんなく言わしめば居士の俳句の方面に於ける指導は実に汪洋おうようたる海のような広濶こうかつな感じのするものであったが写生文の方面に於ける指導はまだ種々の点に於て到らぬ所が多かったようである。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
四方広濶こうかつにして、山頂は草原——
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
青い空が広濶こうかつとつづいていた。
ヒッポドロム (新字新仮名) / 室生犀星(著)
人生と文化との広濶こうかつな海面を見わたす能力が当時の男にあったとすれば、女にもまたあったであろう。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)