峻酷しゅんこく)” の例文
サンテ監獄に囚われ、殺人犯の名のもとに検事の峻酷しゅんこくな取調べを受けつつあるジルベールの母親であったのだ!ルパンはなおつづけた。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
それはまたしっかりした精悍せいかんなそして陰気な顔つきであった。変に複雑な相貌で、一見しては謙譲に見えるが、やがて峻酷しゅんこくなふうに見えて来る。
屋外には峻酷しゅんこくな冬が、日ごと夜ごと暴れ狂っていた。世界はすべて、いやが上にも降り積もる深雪の下にしつぶされて死んだようになっていた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
父は長男たる私に対しては、ことに峻酷しゅんこくな教育をした。小さい時から父の前でひざをくずすことは許されなかった。
私の父と母 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すなわちヨブの目下もっかの惨苦及びきたらんとする滅亡を以て悪の結果と断定したのであって、時代思想の罪とはいえ、いかにも峻酷しゅんこくであるといわねばならぬ。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
かくの如く彼は、十月二十七日において、遂に評定所ひょうじょうしょにおいて死刑の宣告を受けたり。その宣告たるや、実に幕法のすこぶる峻酷しゅんこくなるを見るに足るものあり。曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
友はわずかにおもてげて、額越ひたいごしに検事代理の色をうかがいぬ。渠は峻酷しゅんこくなる法官の威容をもて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういう風格のある人に、まま見られる一短所は、謹厳自らを持す余りに、人を責める時にも、自然、厳密に過ぎ峻酷しゅんこくに過ぎる傾きのあることである。潔癖けっぺきは、むしろ孔明の小さいきずだった。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお昔のとおり快活で激烈ではあったが、その快活さも悲しみと怒りを含んでるかのように痙攣的けいれんてき峻酷しゅんこくさを帯び、その激烈さも常に一種の静かな陰鬱いんうつ銷沈しょうちんに終わった。
この第十五章を前の彼の語すなわち第四、五章と比較するときその語勢、その態度に大なる相違あることが認められる。間接より直接に、静穏より峻酷しゅんこくへと彼は変ったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)