島人しまびと)” の例文
お露は児のために生き、児は島人しまびと何人なんぴとにもいだかれ、大河はその望むところを達して島の奥、森蔭暗き墓場に眠るを得たり。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
身動きもせず様子をうかゞって居りますると、弓をげたる島人しまびとが、小石を拾って打付けましたけれども、文治は少しも動かぬものですから、死んだと思うてか、いよ/\側に寄りまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
の、悲調な一首も島人しまびとの胸にまだ生々なまなましくのこっていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浦人うらびと島人しまびと乗せて城下に往来ゆききすること、前に変わらず、港開けて車道でき人通りしげくなりて昔に比ぶればここも浮世の仲間入りせしを彼はうれしともはた悲しとも思わぬ様なりし。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
悪事千里とはう申したもの、何時いつしか此の事がおかみの耳に伝わりまして、お瀧はたちま召捕めしとりとなり、続いて遠島を申付けられました次第でございますが、如何いかにも島人しまびとに珍らしき美人でありますから
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この島や島人しまびとはすっかり自分の気に入ってしまった。瀬戸内にこんな島があって、自分のような男を、ともかくも呑気のんきに過さしてくれるかと思うと、まさにこれ夢物語の一章一節、と言いたくなる。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
案にたがわず此の島は折々四辺あたり島人しまびとの訪い来る島に相違ない、たとい其の島人が鬼であろうがじゃであろうが、事を分けて話したら、よもや頼みにならぬ事もあるまじ、やれ嬉しや、やッ……それ/\
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)