山東さんとう)” の例文
そのうちに任期が満ちて、彼は山東さんとう別駕べつがに移されたので、家族を連れて新任地へ赴く途中、荏平じんへいという所の旅館に行き着いた。
梁山泊りょうざんぱくといって。いや、違ッた、そ、その梁山泊のある山東さんとうという地方へ、じつアこんど、おらあ役人になって行くわけさ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まる二や山東さんとう丸菱まるびしぢやもう買収を始めてゐるんだぜ。奴等只でさへ腰がフラフラしてゐるんだ。
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
四川しせん広東カントンは? ちょうど今戦争の真最中だし、山東さんとう河南かなんの方は? おお土匪どひが人質をさらってゆく。もし人質に取られたら、幸福な家庭はすぐに不幸な家庭になってしまう。
幸福な家庭 (新字新仮名) / 魯迅(著)
およそ北京ほくけい山東さんとう尼姑にこことごとく逮捕して京に上せ、厳重に勘問かんもんし、ついに天下の尼姑という尼姑をとらうるに至りしが、得るあたわずしてみ、遂に後の史家をして、妖耶ようか人耶ひとかわれこれを知らず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう一人、さんといふ山東さんとう出身の留学生がゐて、これは医科だつた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「冗談を云うな山東さんとうの産を」
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
湖は海のごとく、山東さんとう河川かせんを無数に吸いれ、そしてまた山東の外洋へと、そのみなぎりはどこかで吐き出されているらしい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高は苦力の本場の山東さんとう省の生まれであるが、年は二十二歳、これまで上海シャンハイに働いていたそうで、ブロークンながらも少しく英語を話すので調法であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「では、これに紹介状をしたためておきましたから、山東さんとう梁山泊りょうざんぱくへ行って、よい時節をお待ちなされるがいい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)