局々つぼねつぼね)” の例文
土足の武者たちは、局々つぼねつぼね調度ちょうどを荒らし、御簾みすを引き落し、お座所の御手筥みてばこからとばりまでひッくり返して、家探しに興がッた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平中は耳を側立そばだてた。成程なるほどふと気がついて見れば、不相変あひかはらず小止をやみない雨声うせいと一しよに、御前ごぜんへ詰めてゐた女房たちが局々つぼねつぼねに帰るらしい、人ざわめきが聞えて来る。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
廉子ときけば、后町きさきまち局々つぼねつぼね、あまたな寵姫ちょうきも、みなおしゅうとめのようにおそれはばかっているのである。それに内侍はいつか帝のおたねをやどしていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの石ノ庭、局々つぼねつぼね、およそ柳営の隅々までをいま、足音のない闖入者ちんにゅうしゃのような薄煙が、所きらわず這いまわっている——。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外では、扈従こじゅうきたてていたし、局々つぼねつぼねでは、不意を知った女房たちが、いちどに灯を濡らして泣き乱れていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みかどがよる御殿おとどにいることなく、栄子の几帳とばり后町きさきまち局々つぼねつぼねを、毎夜毎夜かえておいでであろうと、帰るところは自分のほかにないものときめていた。またそう信じていいだけの理由もある。
後宮の局々つぼねつぼねでもさわぎ立った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)