尾頭おかしら)” の例文
今では白壁しらかべのように白い絹の上を、どこまでも同じ幅で走って、尾頭おかしらともにぷつりと折れてしまう黒い線を認めるだけである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は歓びの余り昂奮こうふんし、母と自分の心づくしであるといって、尾頭おかしら付きの膳に酒を添えて祝って呉れた。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
安達君は尾頭おかしらつきに目を留めて、もう疑わなかった。大谷夫人は大いに心掛けてくれたのだった。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
尾頭おかしらのあるものの死骸しがいだと思うと、気味が悪くッて食べられねえッて、左様そういうんだ。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
安「精進じゃアない、御婚礼だから蛤のお吸物に尾頭おかしらつきでなければ出されません」
外はかば篝火かがり真昼まひるの様に明るい。余等の天幕の前では、地上にかん/\炭火すみびおこして、ブツ/\切りにした山鳥や、尾頭おかしらつきのやまべ醤油したじひたしジュウ/\あぶっては持て、炙っては持て来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その裏には自分と利害の糸をからあわせなければならない恐ろしい事実がひそんでいるとも気がつかずに、尾頭おかしらもない夢とのみ打ち興じてすましていた自分の無智に驚いた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ま、ま、めしあがれ、熱いところを。ね、御緩ごゆっくり。さあ、これえ、お焼物やきものがない。ええ、間抜けな、ぬたばかり。これえ、御酒ごしゅ尾頭おかしら附物つきものだわ。ぬたばかり、いやぬたぬたとぬたったおんなだ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心祝いとあって、お赤飯に尾頭おかしらつきで、店員達が居並んだ。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)