たつと)” の例文
何もさるの歳だからとて、視ざる聴かざる言はざるをたつとぶわけでは無いが、なうくゝればとが無しといふのはいにしへからの通り文句である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
その源をおろそかにして、どうしてまことの智をたつとび、まことの徳に從ひ、まことの美を愛するといふことが出來よう。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
若し斯くの如き紹介状をくる人が、温厚篤實にしてよろづ中庸をたつとぶ世上の士君子、例へば我校長田島氏の如きであつたら、恐らく見もせぬうちから玄關に立つ人を前門の虎と心得て
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
典型的アカデミツクな文展に対して、大阪が同情し、後援すべき画風がありとすれば、それは独創をたつとび、研究の自由を唱道し、兼ねてまた反抗的精神に富むでゐる美術院一派でなくてはならぬといふのが
〔譯〕人は、厚重こうちようを貴ぶ、遲重ちちようを貴ばず。眞率しんそつたつとぶ、輕率けいそつを尚ばず。