小鰺こあじ)” の例文
すだれ捲上まきあげし二階の窓に夕栄ゆうばえ鱗雲うろこぐも打眺め夕河岸ゆうがし小鰺こあじ売行く声聞きつけてにわか夕餉ゆうげの仕度待兼まちかぬる心地するも町中なればこそ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
山「なに海の釣は餌が違うよ、えびで鯛を釣るという事があるが其の通り海の餌はいきた魚よ、此の小鰺こあじを切って餌にするのだ」
鉄道馬車は今よりとどろめて、朝詣あさまいりの美人を乗せたる人力車が斜めに線路を横ぎるも危うく、きたる小鰺こあじうる魚商さかなや盤台はんだいおもげに威勢よく走り来れば
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小鰺こあじだの、𩼳あいだの、「おせんころし」という鯛のような形をした、せいぜい五、六センチほどの小魚などは、いちいち料理する手間が惜しまれるほどのチビ魚だが
瀬戸内の小魚たち (新字新仮名) / 壺井栄(著)
彼女はその時偶然口にのぼった一塩ひとしおにした小鰺こあじの焼いたのを美味うまいと云ってしきりにめた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『あ、お次さんか。きのう持って来た小鰺こあじ美味うまかったぜ。師匠も美味いといっていた』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
福子は此の手紙の一字一句を胸に置いて、庄造とリヽーのすることにそれとなく眼をつけてゐるのだが、小鰺こあじの二杯酢を肴にしてチビリ/\傾けてゐる庄造は、一と口飲んでは猪口ちょくを置くと
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
福子は此の手紙の一字一句を胸に置いて、庄造とリヽーのすることにそれとなく眼をつけてゐるのだが、小鰺こあじの二杯酢をさかなにしてチビリ/\傾けてゐる庄造は、くち飲んでは猪口ちょくを置くと
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もう一つは僕が母と同じように一塩ひとしお小鰺こあじを好いていたからでもある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
福子はこの手紙の一字一句を胸に置いて、庄造とリリーのすることにそれとなくをつけているのだが、小鰺こあじの二杯酢をさかなにしてチビリチビリ傾けている庄造は、一と口飲んでは猪口ちょくを置くと
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)