小芳こよし)” の例文
大していい腕ではないが、妻女の小芳こよしというのがつい近頃まで吉原で明石あかしと名乗った遊女あがりで、ちょっと別嬪べっぴん、これが町内での評判でした。
粋で、品のい、しっとりしたしまお召に、黒繻子くろじゅすの丸帯した御新造ごしんぞ風の円髷まるまげは、見違えるように質素じみだけれども、みどりの黒髪たぐいなき、柳橋の小芳こよしであった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ごくあたまだった処の福吉ふくきち、おかね、小芳こよし雛吉ひなきち延吉のぶきち小玉こたま、小さん、などという皆其の頃の有名の女ばかり、鳥羽屋五蝶とばやごちょう壽樂じゅらくと申します幇間たいこもちが二人、れは一寸ちょっと荻江節おぎえぶしもやります。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これは、この柏屋かしわやねえさんの、小芳こよしと云うものの妹分で、綱次つなじと聞えた流行妓はやりっこである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小芳こよしさんも、あおくなって涙を流して、とりなしてくんなすったが、たとい泣いても縋っても、こがれじにをしても構わん、おれの命令だ、とおっしゃってな、二の句は続かん、小芳さんも
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)