小舞こまい)” の例文
小腰をかがめておうな小舞こまいを舞うているのは、冴々さえざえした眼の、白い顔がすこし赤らみを含んで、汗ばんだ耳もとからほおへ、頬からくび
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
お話変って、十二月五日の日暮方ひくれがた、江戸屋の清次が重二郎の居ります裏長屋の一番奥の、小舞こまいかきの竹と申す者のたくへやってまいり
とこの壁が落ち、横長窓の小舞こまい女竹めたけが折れて居たりして、わしは不快になり、明日から、早速さっそく、職人を入れて修理する様に杉山に命じた。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
信長から、於蘭おらん、ひとつ小舞こまいせい、といわれればすすんで舞い、つづみをせよと命じられれば、非常によい高音たかねをそのたなごころから出して聞かせた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うぐいすの啼き声が聞こえて来た。小舞こまい物をうたう声などもした。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
能の狂言の小舞こまいうたい
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小舞こまいかきの竹は勝手を知っていますから、明店あきだな上総戸かずさどを明けて中へ這入はいり、こもき、睾丸火鉢きんたまひばちを入れ、坐蒲団ざぶとんを布きましたから、其の上に清次は胡座あぐらをかき。
つづみ大倉おおくら小舞こまい幸若こうわかなどを招いて、奥方さまやその余の御家族たちに囲まれ、至極、陽気に暮しておるから、もういささかも陣中では留守を案じて下さるな——と
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私をしからないで、あんの山からこんの山へ、飛んでくるのはなんじゃろか、と頭に二本、指だか扇子だかを、兎の耳のようにおったてる小舞こまいを、能の狂言師をまねいて踊りだしたが