“小瓶(こびん)” の例文
腰掛の間の汚れたところへ新聞紙を敷いて座っている鷲尾は、大工の妹婿が餞別(せんべつ)した小瓶(こびん)の酒を飲みながら、独(ひと)り合点に喋(しゃ)べった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
陽(ひ)がかげる頃に彼れは居酒屋を出て反物屋(たんものや)によって華手(はで)なモスリンの端切(はぎ)れを買った。またビールの小瓶(こびん)を三本と油糟(あぶらかす)とを馬車に積んだ。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鞍馬法師は雄黄(ゆおう)を鎔(と)いて小瓶(こびん)に入れ、富子の閨房へ往ってみると、枯木のような角(つの)の生えた雪のように白い蛇が三尺あまりの口を開け、紅(くれない)の舌を吐いて室(へや)の中一ぱいになっていた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
水入(みずいれ)に在(あ)る水ではない。五六輪の豆菊(まめぎく)を挿(さ)した硝子(ガラス)の小瓶(こびん)を花ながら傾けて、どっと硯の池に落した水である。さかに磨(す)り減らした古梅園(こばいえん)をしきりに動かすと、じゃりじゃり云う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)