小奇麗こぎれい)” の例文
曙覧は汚穢おわいを嫌はざりし人、されど身のまはりは小奇麗こぎれいにありしかと思はる。元義は潔癖の人、されど何となくきたなき人にはあらざりしか。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いざ入ってみるとそこは、あまり小奇麗こぎれいとも言えぬ手狭な一間で、貧乏びんぼうくさい家具のならかたも、まるで急場しのぎにやってのけたといった様子だった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
むかしともといふうちにもこれはわすられぬ由縁ゆかりのあるひと小川町をがはまち高坂かうさかとて小奇麗こぎれい烟草屋たばこや一人息子ひとりむすこいま此樣このやういろくろられぬをとこになつてはれども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
表通りは何処どこか閑散として、古鉄屋ふるがねやや、かもじ屋や、鍛冶屋かじや位が目に立ったが、横町は小奇麗こぎれいだった。
揉み手をしながら小奇麗こぎれいな若衆が這入って来た。新しい手拭浴衣を端折はおっている。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこに恰好かっこう小奇麗こぎれいな新宅があるので、そこへ引越そうという相談だ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)