富豪ふごう)” の例文
こんなふうな人が多々あると、貴族は貴族同士、富豪ふごうは富豪同士で楽しめるわけだが、いずれの国にあっても、そうなってはいない。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
老人にも若者にも、富豪ふごうにも乞食こじきにも、学者にも無頼漢ぶらいかんにも、いや、女にさえも、まったくその人になりきってしまうことができるといいます。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だがかの女らの友だちは、ケートと愛称あいしょうした。ケートは二十年ちかくもニューヨークの富豪ふごう、ベンフヒールド氏の家に奉公ほうこうして女執事おんなしつじをつとめた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
ある富豪ふごうが、名前をかくしてかなりたくさんな金を、慰問隊のために寄附したこと、この二つのことを、ニーナは房枝にまもるように約束したのであった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
裏町で一番広大で威張いばっている某富豪ふごうの家の普請ふしんに運ぶ土砂どしゃのトラックの蹂躙じゅうりんめに荒された道路だ、——良民りょうみんの為めに——のいきどおりも幾度か覚えた。だが、恩恵もあるのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
里塚りづか界隈かいわいでの富豪ふごうの長女が、なんだってただの一獣医じゅういつまとなったか、たとい種畜場しゅちくじょうはやめても東京へでたらば高等官こうとうかんのはしくれぐらいにはなっておれることと思っておった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
したがって自分は子守か乳母うばの真似をしていればよいと思うか、あるいは自分のあずかれるものは日本国をうて立つ後日ごじつの国民である。中には貴族の子もあり富豪ふごうの愛嬢もあり、また学者の後裔こうえいもある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また一面、富豪ふごうが多数の来賓らいひんを招いて饗宴きょうえんする料理、体裁を主とした装飾料理があって、これもまた一種の日本料理として早くから発達し、その存在が許されている。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)