こつそ)” の例文
お雪はこつそりと板の間に上つて——、老爺の枕邊に坐つたが遣瀬もない佗しさが身に迫つて、子供心の埒もなく、涙が直ぐに星の樣な目を濕した。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あ之で目が覚めたのだなと思つて、お定は直ぐ起き上つて、こつそりと格子をはづした。丑之助が身軽に入つて了つた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
櫺子れんじの外にコツコツと格子を叩く音がする。あ之で目が覺めたのだなと思つて、お定は直ぐ起上つて、こつそりと格子をはづした。丑之助が身輕みがるに入つて了つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
甲田はそれをみんなに見せた。そして旅の學生に金を呉れてやつた事を話した。○○市へ行くと言つて出て行つて、こつそり木賃宿へ泊つて行つた事も話した。終ひに斯う言つた。
葉書 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
甲田はそれをみんなに見せた。そして旅の学生に金を呉れてやつた事を話した。○○市へ行くと言つて出て行つて、こつそり木賃宿へ泊つて行つた事も話した。しまひに斯う言つた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
すると、こつそり起きて、圍爐裏いろりに薪を添へ、パチパチと音して勢ひよく燃える炎に老の顏を照らされながら、一つしか無い目に涙を湛へて、六十年の來し方を胸に繰返す。——
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
時としてこつそり一人で家に歸る事もあつたが、學校に上つてからも其性癖が變らず、樂書をしたり、木柵を潜り抜けたりして先生に叱られる事は人並であつたけれど、兎角卑屈で
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
立つ前にこつそ衣服きものなどを取纒めて、幸ひ此村こゝから盛岡の停車場に行つて驛夫をしてる千太郎といふ人があるから、馬車追の權作老爺に頼んで、豫じめ其千太郎の宅まで屆けて置く。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
立つ前にこつそ衣服きものなどを取纒めて、幸ひ此村ここから盛岡の停車場に行つて駅夫をしてる千太郎といふ人があるから、馬車追の権作老爺おやぢに頼んで、予じめ其千太郎の宅まで届けて置く。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お定はこつそりと玉菜を出して、膝の上に載せた儘、暫時しばしは飽かずも其香を嗅いでゐた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お定はこつそりと玉菜を出して、膝の上に載せた儘、暫時しばしは飽かずも其香を嗅いでゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
時としてこつそり一人で家に帰る事もあつたが、学校に上つてからも其性癖が変らず、楽書をしたり、木柵をくぐり抜けたりして先生に叱られる事は人並であつたけれど、兎角卑屈で、寡言むつつり
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)