)” の例文
尊い神が、神の詞をる時に、其を自ら発言することの出来る資格を授ける為に、此神の出現したと考へたのが、古代の考へ方である。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
だが、来臨したまれびとのり出す咒詞の威力は、旧室フルムロを一挙に若室ワカムロ新殿ニヒドノに変じて了ふのであつた。尠くとも、さう信じてゐた。
村々の祭り (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
後世の因明論理や儒者の常識を超越した社会現象は、皆、此即位又は元旦の詔旨(のりとの本体)のナホす、と言ふ威力の信仰に基いてゐるのだ。
先に訳した中臣寿詞の「天都詔刀の太詔刀言を以ちてれ。かく宣らば、マチは、弱蒜ワカヒル五百箇ユツタカムラ生ひ出でむ……」
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
宣り処における儀礼に用ゐる詞章といふことは、神がりの方式を以て、命ずる詞章といふことなのである。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此神意をる呪詞を具体化するのは、唯伝達し、執行するだけであつた。神の呪力は、人を待たずとも、効果を表すが、併し、其伝誦を誤ると、大事である。
上として諷誦の責任のあつた前代の奏寿其他の天子を対象とする呪言ヨゴト、氏人に神言ノリトなどは、新作を以てする様になつても、特別の心構へを以てせねばならなかつた。
拝賀は臣下のする事で、天子は其に先だつて、元旦の詔旨をり降されるのであつた。
(二)……夕日より朝日照るまで、天都詔刀之太詔刀言アマツノリトノフトノリトゴトをもちてれ。……皇神たちも、千秋五百秋の相嘗に、相うづのひまつり、かきはに、ときはに、斎奉利氐……(中臣寿詞)
神又は長上からり下す詞章である。その詞を受ける者の側に、これに和する詞章が出来るのは、自然な事である。謂はゞ「奏詞」、古語に存する称へを用ゐれば、「よごと」である。
日本文学の発生 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此中の「太」は、単に、天つ祝詞の美称と考へられて来てゐるが、私は、壮重なのりとに於いて、唱へられる言葉、即天つに於ける、壮重なのりとごとゝ解する方がよいとおもふ。
呪詞及び祝詞 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「夕日より朝日照るまで天つ祝詞ノリトの太のりとゴトをもてれ。かくのらば、……」
水の女 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「夕日より朝日照るまで天つ祝詞ノリトの太のりとゴトをもてれ。かくのらば、……」
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この玉串をさし立てゝ、夕日より朝日照るに至るまで、天つのりとの太のりと言をもてれ。かくのらば、占象マチは、わかひるに、ゆつ篁出でむ。其下よりアメ八井ヤヰ出でむ。……(中臣寿詞)
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
法令ノリの古い形は、かうした方法でり施された物なることが知れる。
呪言を唱へかけて争うたのが、段々固定して、家と名とをる様になつた。さうして、相手の発言を求める形になつた。つぎを諷誦して、家系をあかした古代の風習が、単純化して了うたのであらう。