嫡流ちゃくりゅう)” の例文
源氏の嫡流ちゃくりゅう足利家に生れた自分が、いま、北条氏に取ッて代ろうとするのに、なんの不思議があろう。——なんの悪か、と彼は思う。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頼政殿は、清和せいわ源氏の嫡流ちゃくりゅうで、武芸はもとより、文武両道に優れた得難いお人、かつて近衛院の頃、お歌会で、深山みやまの花という即題に
政治や宗教などの些事さじのために指弾し合ってはいけません。それは取るに足らぬ事柄です。あなたがたの民族が、教会の嫡流ちゃくりゅうであろうと理性の嫡流であろうと、それは大したことではありません。
狩野の嫡流ちゃくりゅうから出たのですから、漢画水墨の技巧は生れながら受けて、早くこれに熟達を加えているのに、大和絵の粋をことごとく消化している、そうしてそれを導く者が、一代の巨人秀吉であり
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
天智は天武の兄で嫡流ちゃくりゅうであった。
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
大膳は新当流を以て久しく家康に手をとって師範していたが、その嫡流ちゃくりゅうの絶えたため、後に家康は、その孫の有馬豊前ぶぜんに家名を継がせ、一族を紀州家に転職させている。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐革からかわというよろい小烏こがらすという太刀たち、祖先貞盛公より、この維盛まで九代、代々嫡流ちゃくりゅうに伝わる家宝につき、もし御運も開け、都に還る事もあれば、六代にお渡し下さい、とそのように伝えて呉れ
みずから名のっていうその人とは、滄州横海郡おうかいぐんの名族、遠き大周皇帝の嫡流ちゃくりゅうの子孫、姓はさい、名はしん、あだ名を小旋風しょうせんぷう。すなわち小旋風の柴進さいしんとは私であると、まず言って
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——それは、今でこそ、わびしく暮しておられますが、さすがに私たちが見ても、どこか違っている源家の嫡流ちゃくりゅう佐殿すけどのです。——あの頼朝殿へ、妹は、嫁ぎたがっております」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもその男性は、彼女の理想に最もかなった高い家門の嫡流ちゃくりゅうである。風采も土くさくなくて、貴公子の香りがある。武事ばかりでなくよく風月を解しもするし、志もまた大きい。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なども人いちばい意識にい彼で、時流の武人どもからいわせれば、ふるい武将型と笑うかもしれないほど名を重んじ、またつねに源家の嫡流ちゃくりゅうたることを、ほこり高くしている義貞でもある。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)