女連おんなづれ)” の例文
しばらくはだれも物を言わない。日暮里にっぽりの停車を過ぎた頃、始めて物を言い出したのは、くろうとらしい女連おんなづれであった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
女連おんなづれは同盟して、お光を法外のけものにする。男児連おとこづれは往来毎にお光をいじめる。併しお光は避け隠れして取り合わぬ。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
伊「師匠、おめえわりい、重いものを持ってるもんだから足元を見るのだ、それに女連おんなづれだからよ、駄洒落などを云うから宜くない、少しばかり鼻薬を遣んなよ」
主人は旅順の陥落より女連おんなづれの身元を聞きたいと云う顔で、しばらく考え込んでいたがようやく決心をしたものと見えて「それじゃ出るとしよう」と思い切って立つ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自宅うちの惣菜や、乾物ひものの残りを持込んで、七輪を起す女連おんなづれも居るという訳で、何やや片付いた十一時過になると福太郎の狭い納屋の中が、時ならぬ酒宴さかもりの場面に変って行った。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
七兵衛は自分が見え隠れにこの女連おんなづれを守護して行くつもりであったけれど、幸いに甚だ都合のよい従者を一人発見しました。その従者というのはすなわち宇治山田の米友であります。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すれ違い押合う女連おんなづれにも、ただ袖の寒くなりますばかり。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乙「どうも此の辺は物騒な処で、冬向ふゆむき女連おんなづれや一人旅では歩けませぬ、折々勾引かどわかしや追剥が出ます」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「甲府詰の主人神尾方へ参る途中の者、女連おんなづれにて宿に困る……はあ、なるほど」
彼の折は主名を明すことも出来ず、怖い事も恐ろしい事もござらんが、女連おんなづれゆえ大きに心配いたし居りました、実に其の折は意外の御迷惑をかけまして誠に相済みません事で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
女連おんなづれのことだから、まだ四五日はかかるだろう」
それに女連おんなづれ雑沓ざっとうの中で間違でも有っては成らぬ、ことにお隅を連れて行くは心配でもあり役柄をも考えたから、大生郷の天神前の宇治の里という料理屋へあがり、此処こゝの奥で一猪口ひとちょこっていると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)