大立者おおだてもの)” の例文
その子の金平きんぴらも、きんぴら牛蒡ごぼうやきんぴら糊に名を残したばかりか、江戸初期の芝居や浄瑠璃には、なくてはならない大立者おおだてものだ。
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
戦争も終わりを告げるころには、西郷隆盛らは皆戦死し、その余波は当時政府の大立者おおだてものたる大久保利通おおくぼとしみちの身にまで及んで行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蕪村を大阪とすればこれはまた頭抜ずぬけた大立者おおだてものであるが当人は大阪を嫌ふたか江戸と京で一生の大部分を送つた。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
悪漢あっかんウルスキーなる人物は、マスクを取ると、いま上海シャンハイ国際社交界の大立者おおだてものとして知らぬ人なき大東新報社長ジョン・ウルランドその人に外ならなかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は余りに多く円朝を語り過ぎた観があるが、なんと云っても円朝が明治時代における落語界の大立者おおだてもので、劇方面にも最も関係が多いのであるから已むを得ない。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ロシアのバレー作家のマッシンがある人の問に答えて、「見玉え。今の世界の大立者おおだてものと云えばみんなグロテスクではないか。例えばカイゼルでもチャップリンでも……」
帝展を見ざるの記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
上下有頂天うちょうてんとなって西欧文化を高調した時、この潮流にさおさして極端に西洋臭い言文一致の文体をはじめたのがたちまち人気を沸騰して、一躍文壇の大立者おおだてものとなったのは山田美妙斎やまだびみょうさいであった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
実業界の大立者おおだてもの宮崎常右衛門氏が、真赤な偽物で、実は白蝙蝠団の一員であったとすれば、その人望と、巨万の資産の運用とによって、一種の産業動乱を捲き起すことは、さして難事ではない。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうしたささやきが、上方かみがたから来た一座一行の間ばかりか、江戸の芸界にもさかんにいいかわされ、このところ、どのような大立者おおだてものたちも、まるで他国者のために、光をおおわれてしまったのである。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
熊谷くまがいや、鱶七ふかしちや、大岡越前守や、そういうたぐいの役々を好んで演じていたが、いずれも団十郎張りであるという好評で、やがては大立者おおだてものとなるべき鷹揚おうような芸風であったのを
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは、実業界の大立者おおだてもの羽柴壮太郎はしばそうたろう氏の邸宅です。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれはその以来、一躍して書生芝居の大立者おおだてものになったのであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)