大水おおみず)” の例文
「このゆきけて、どんなに大水おおみずるかということを、あなたはらないからです。」と、からすはいってしんじなかった。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
人間に対する用意は、まず畳を上げて、ふすま障子しょうじ諸財一切しょざいいっさいの始末を、先年せんねん大水おおみずの標準によって、処理し終った。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その石磴いしだんをおりて村の方へ歩いて往くと、牛をいた老人としよりが来る、その老人としよりに、今、水神様すいじんさまのお告げがあったが、今晩、大水おおみずが出るから、河原へしてある稲は
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それが明治の初年、ここらでは何十年振りとかいう大水おおみずが出たときに、小袋明神もまたこの天災をのがれることは出来ないで、神社も神体もみな何処かへ押流されてしまった。
こま犬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だがその時代は、学生生活はたいへん苦しいときであったうえに、雨谷君の実家は大水おおみずのために家屋かおく家財かざいごと流され、ほとんど、無一物むいちぶつにひとしいあわれな状態になっていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それでも、自ら責めているふうをまだ誇張して見せ、かすれたしゃくり泣きを喉から押し戻し、ひっぱたき甲斐がいのある、その醜い顔の、ぬかみたいな斑点しみを、大水おおみずで洗い落としている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あの大水おおみずのあった時より、あの悪病わるびょう流行はやった時が怖しかった。どうしてこの村は、人が長く落付かないだろう。私共も早くせがれが一人前となって、店でも出すようになったら、町へ越して行きたいものだ。」
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「きっと、大水おおみずよ。」
うみぼうずと おひめさま (新字新仮名) / 小川未明(著)