“外面(げめん)” の例文
御方は、放胆に外面(げめん)をかなぐり捨てた。しかしその下の相(すがた)は更に妖(あや)しいまで美しい。艶なる魔魅(まみ)、誘惑の毒壺から、紅(あか)と紫色の焔が燃えているような瞳——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吁(ああ)、彼はその初一念を遂(と)げて、外面(げめん)に、内心に、今は全くこの世からなる魔道に墜(お)つるを得たりけるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人の狼なるは狼の狼なるよりも可惧(おそるべく)可悪(にくむべし)。篤実(とくじつ)を外面(げめん)とし、奸慾(かんよく)を内心(ないしん)とするを狼者(おほかみもの)といひ、娵(よめ)を悍戻(いびる)を狼老婆(おほかみばゝ)といふ。巧(たくみ)に狼心(らうしん)をかくすとも識者(しきしや)の心眼(しんがん)は明鏡(めいきやう)なり。
信切顔(しんせつがお)をして其人の秘密を聞き出し其(そ)れを直様(すぐさま)官に売附けて世を渡る、外面(げめん)如菩薩(にょぼさつ)内心如夜叉(にょやしゃ)とは女に非ず探偵なり、切取強盗人殺牢破りなど云える悪人多からずば其職繁昌せず
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
人傳(ひとづて)の文(ふみ)一通(いつつう)それすらもよこさぬとは外面(げめん)如菩薩(によぼさつ)、内心(ないしん)はあれも如夜叉(によやしや)め。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
登竜門というものは、ひとを市場へ一直線に送りこむ外面(げめん)如菩薩(にょぼさつ)の地獄の門だ。けれども僕は着飾った苺の悲しみを知っている。そうしてこのごろ、それを尊く思いはじめた。僕は逃げない。
ダス・ゲマイネ (新字新仮名) / 太宰治(著)
「華厳経(けごんきょう)に外面(げめん)如菩薩(にょぼさつ)、内心(ないしん)如夜叉(にょやしゃ)と云う句がある。知ってるだろう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外面(げめん)如菩薩(にょぼさつ)、内心(ないしん)如夜叉(にょやしゃ)とは彼女等三人の事でなければならぬ。そうしてこの恐ろしい形容詞が、女に限られたものでなければ、彼(か)の呉井嬢次と称する怪少年も、その仲間に数え入れなければならぬ。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人の狼なるは狼の狼なるよりも可惧(おそるべく)可悪(にくむべし)。篤実(とくじつ)を外面(げめん)とし、奸慾(かんよく)を内心(ないしん)とするを狼者(おほかみもの)といひ、娵(よめ)を悍戻(いびる)を狼老婆(おほかみばゝ)といふ。巧(たくみ)に狼心(らうしん)をかくすとも識者(しきしや)の心眼(しんがん)は明鏡(めいきやう)なり。