夕方ゆふかた)” の例文
その日の狩は獲物が多かつたと見えて、夕方ゆふかた宮にお帰りになる頃には、すつかり田舎娘の事はお忘れになつてゐた。
夕方ゆふかたになると竹垣たけがきに朝顔のからんだ勝手口で行水ぎやうずゐをつかつたのちのまゝ真裸体まつぱだか晩酌ばんしやくを傾けやつとの事ぜんを離れると、夏の黄昏たそがれ家々いへ/\蚊遣かやりけむりと共にいつか夜となり
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
獅子や驢馬ろばと共同生活を営んでゐた仏蘭西の女流画家ロザ・ボナアルは、何処に一つ女らしいところのない生れつきで、夕方ゆふかた野路のみちでも散歩してゐると野良のらがへりの農夫達ひやくしやうだち
しか日盛ひざかりの暑さにはさすがにうちを出かねて夕方ゆふかたになるのを待つ。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
夕方ゆふかた豊後がやしきに帰つて、用人ようにんを相手にその話をすると、用人ははたと膝を叩いた。そして
ベンヂヤミン・フランクリンがある冬馬につて田舎に旅行をした事があつた。雪の多い頃で、夕方ゆふかた田舎の旅籠屋はたごやに着いた頃には、馬も人も砂糖の塊のやうに真白まつしろになつてゐた。
トオマス嬢はある日の夕方ゆふかた美しく刈込まれた学校の校庭カムパスを散歩してゐた。晩食ばんめし消化こなれのいゝ物でうまく食べたし、新調のくつ繊細きやしやな足の裏で軽く鳴つてゐるので、女博士をんなはかせはすつかりいい気持になつた。