夏目なつめ)” の例文
夏目なつめ先生はペン皿の代りに煎茶せんちや茶箕ちやみを使つてゐられた。僕は早速さつそくその智慧ちゑを学んで、僕の家に伝はつた紫檀したんの茶箕をペン皿にした。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちょっと口をすべらして聞いてみたんです……すると、その時は菱沼さん、別に大して不思議にも思われないようでしたが、恰度そばに居合わせた私の同僚なかま夏目なつめってのが、どんな女だって
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
見られしか暫時しばらくひかへよと申さるゝ時常盤橋ときはばし御門番松平近江守殿あふみのかみどの番頭ばんがしら夏目なつめ五郎右衞門より差出したる者兩人足輕小頭こがしら一人足輕あしがる六七人附そひ罷出しに其者共の風俗ふうぞく何れも棧留さんとめ綿入の上へ青梅のあはせ羽織を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
僕はそのために口を探し、同じ年の十二月に海軍機関学校の教官になつた。夏目なつめ先生の死なれたのはこの十二月の九日ここのかだつた。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
九月廿二日夏目なつめ五郎右衞門
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われは又子規居士しきこじ短尺たんじやくの如き、夏目なつめ先生の書の如き、近人の作品も蔵せざるにあらず。然れどもそはいまだ古玩たらず。
わが家の古玩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あの長い刀をかけた、——いや、かういふ昔の景色は先師夏目なつめ先生の「彼岸過迄ひがんすぎまで」に書いてある以上、今更僕の悪文などは待たずともいのに違ひない。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕にも時々夏目なつめ先生の書を鑑定かんていしてくれろと言ふ人がある。が、僕の眼光ではどうも判然とは鑑定出来ない、唯まつ赤なせものだけはおのづから正体しやうたいを現はしてくれる。
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夏目なつめ先生の家が売られると云ふ。ああ云ふ大きな家は保存するのに困る。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、なんでも書けと云はれるなら、子規に関する夏目なつめ先生や大塚おほつか先生の談片を紹介しませう。これは子規を愛する人人にはに合せの子規論を聞かせられるよりも興味のあることと思ひますから。
正岡子規 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)