増上慢ぞうじょうまん)” の例文
さいわい近くにわしの住いがござる、荒屋あばらやではあれど、此処よりはましじゃ、それに君子は危きに近寄らず、増上慢ぞうじょうまんは、御仏みほとけもきつくおいましめのはずではござらぬか
轆轤首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
悟空は、今までの極度の増上慢ぞうじょうまんから、一転して極度の自信のなさにちた。彼は気が弱くなり、ときには苦しさのあまり、恥も外聞も構わずワアワアと大声でいた。
或いは智弁学問ある法師の増上慢ぞうじょうまんが、しばしば生きながら天狗道に身を落さしめたという話もある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
折る者がなかったしかるに天は痛烈つうれつな試練をくだして生死の巌頭がんとう彷徨ほうこうせしめ増上慢ぞうじょうまんを打ちくだいた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
昔から増上慢ぞうじょうまんをもっておのれを害し他をそこのうた事蹟じせきの三分の二はたしかに鏡の所作しょさである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鳥なき里の蝙蝠こうもりとかで、自分以上な者はないと、何ともかとも、手のつけられん小伜こせがれじゃ。ひとつその増上慢ぞうじょうまんの鼻を、折ッぴしょッてくだされば、いっそ、当人にはしあわせというもんじゃろ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わし自身の、増上慢ぞうじょうまんを自らいましめようための、御神霊への誓いだったのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あしらっておきゃあ好い気になりゃあがって、自分天狗の増上慢ぞうじょうまん
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
悟浄ごじょうよ、あきらかに、わが言葉を聴いて、よくこれを思念せよ。身のほど知らずの悟浄よ。いまだ得ざるを得たりといいいまだあかしせざるを証せりと言うのをさえ、世尊せそんはこれを増上慢ぞうじょうまんとて難ぜられた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)