くれ)” の例文
どんな技巧家たくみより、もっともっと熱心に、小さい象牙ぞうげくれに、何やら、細かな図柄を彫り刻んでいた、闇太郎だ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
寅吉は氣色ばみましたが、平次は素知らぬ顏で、その土くれを集めて鼻紙に包みます。
のどけくもゆゆしき野火か山越しに黄色わうじきけぶりふたくれあがれり
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
どさりと赤土のくれが柩の上に落ちはじめた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
花の都の片成かたなりに成りも果てざる土のくれ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ひとくれの土によだれ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
白雪のこごりのくれをひろひみ我すなほなり母をおもひつ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
吹きつけて息づきがふ霧のくれ樺太蕗の葉をひるがへす
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
音せしは老杉が上の雪のくれ凍雪いてゆきの道に落ちたるらしき
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
草ごみに荒く切りゆく田の土はすき刄型はがたの紫のくれ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
草ごみに荒く切りゆく田の土はすき刃型はがたの紫のくれ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雲のくれ夕紫になみなして屋嶋ぞと思ふ嶋々暮れぬ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
凄まじ、黒き血のくれと焦げてくるめく。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)