そゞ)” の例文
而も詩趣ゆたかにして、そゞろにペラスゴイ、キュクロプスの城址を忍ばしむる堅牢の石壁は、かの纖弱の律に歌はれ、往々俗謠に傾ける當代傳奇の宮殿を摧かむとすなり。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
登り/\て足下を見れば半刻ほど前に登り来りし道、蜿々として足下に横たはれり。飴色の半月低く崖下に懸れるを見れば、かた行末ゆくすゑの事なぞそゞろに思ひ出でられつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
世にもかゝる自然の風景もあることかとそゞろに心を動かしたのであるが、渓橋を渡り、山嶺さんれいをめぐり、進めば進むほど、行けば行くだけ、自然の大景は丁度ちやうど尽きざる絵巻物を広げるが如く
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
かうむり越前守感涙かんるゐきもめいじ有難くそゞろに勇み居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)