こわ)” の例文
私は新らしい編上靴を穿いた足首と、膝頭ひざがしらこわばらせつつ、若林博士の背後に跟随くっついて、鶏頭けいとうの咲いた廊下を引返して行った。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを見ると福太郎も真似をするかのように唾液つばを飲み込みかけたが、下顎が石のようにこわばっていて、舌の尖端さきを動かすことすら出来なかった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
何だかそんな夢でも見ているように胸の処がこわばってしまってね。もしかすると、あんまり怖い眼に会い続けたので気が変になっていたのかも知れないけど……。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
という声がうしろから聞こえると同時に私はゾッとして鍵穴から眼を退けた。同時に妻木君の顔一面に浮んだ青白い笑いを見ると身体からだがシャンとこわばるように感じた。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
石のようにこわばった俺と、一等運転手チーフメートと、船長の顔がモウ一度、船長室でブツカリ合った。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私は身体からだを石のようにこわばらせながら、しばらくの間、ボンヤリと眼をみはっておりました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
自分自身がさながらに生きた彫刻か木乃伊ミイラにでもなったような気持で、何等の感情も神経も動かし得ないまま、いつまでもいつまでも眼をみはり、顎をこわばらせているばかりであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ただ、何が何やら解らないまま一句一句に学術的な権威をもって、急角度に緊張しつつ迫って来る、若林博士の説明に脅やかされて、高圧電気にかけられたように、全身をこわばらせていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
石のように頬をこわばらせたまま冷然と眼を閉じている………………………………………………………、……………………………………………………………、出来るだけ静かに………………………
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
全身をこわばらせているのであった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)