さゝ)” の例文
と何かさゝやき、新吉が得心して、旦那の短い脇差をさして、新吉が日が暮れて少したって土手の甚藏のうちへ来て、土間口から
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先づ赤門、『恁麽こんな學校にも教師せんせべすか?』とお定はさゝやいたが、『居るのす。』と答へたお八重はツンと濟してゐた。不忍の池では海の樣だと思つた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
孫作が行つて何やらさゝやくと、清五郎は一寸眉をひそめましたが、思ひ直した樣子で此方へやつて來ました。男つ振りの良いに似ず、ひどく不機嫌な顏をした男です。
其時、待ち設けてゐる御客がた。取次とりつぎ門野かどのは意外な顔をして這入つてた。さうして、其顔を代助のそば迄持つてて、先生、奥さんですとさゝやく様に云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
追拂ふが如くに悦び片時も早く立退たちのかせんと内々ない/\さゝやきけるとなり斯て天一坊の方にてはまづ京都きやうとの御旅館の見立役みたてやくとして赤川大膳は五六日先へ立て上京し京中きやうちう明家あきや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
静かに立ちてあれば、わがそばなる桑の葉、玉蜀黍たうもろこしの葉は、月光げつくわうを浴びて青光あおびかりに光り、棕櫚しゆろはさや/\と月にさゝやく。虫のしげき草を踏めば、月影つきかげ爪先つまさきに散り行く。露のこぼるゝなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
と両手の指を折って頻りに年を数えながら、茂二作と何かさゝやきまして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)