唐辛たうがらし)” の例文
「何を仰有るんです。」若い志望者は唐辛たうがらしのやうに真赤になつてふるへた。「僕はまだそんな真似をする程堕落はしません。」
夜業を廢さないで眼を病んで弱つて居るものも有る。最も甚しい愚なのに至つては、唐辛たうがらしを嗜食して痔に苦んで居るなどと云ふ滑稽なのも有る。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
私は白状します、どうかすると私はお腹が空いて空いて堪らないことが有りました。さういふ時には我知らず甥と同じ行ひに出て、煮付けた唐辛たうがらしの葉などはよくつまみました。
隠元いんげん藤豆ふぢまめたで茘枝れいし唐辛たうがらし、所帯のたしのゝしりたまひそ、苗売の若衆一々名に花を添へていふにこそ、北海道の花茘枝、鷹の爪の唐辛、千成せんなりの酸漿ほうづき、蔓なし隠元、よしあしの大蓼
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
紫蘇しその實、唐辛たうがらしの實を少し雜ぜて之を作ると、朝々の好菜となる。次にはタチツボスミレの天ぷらである。粘液質で、齒當りが甚だ好い。太いタンポポの根もいろいろと使ひ道の有るものである。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
赤い畑の唐辛たうがらし
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
筆記ノオトなかから出して、唐辛たうがらしのやうな辛い点をつけるか、それとも応用問題を出して氷砂糖のやうな甘い点をつけるかは吾輩の考へ一つにある事だ。いいか、判つたか。
入口の壁の上に貼付けたものは、く北信の地方に見かける御札で、烏の群れて居る光景さまを表してある。土壁には大根の乾葉ひば唐辛たうがらしなぞを懸け、粗末な葦簾よしずの雪がこひもしてあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
赤い畑の唐辛たうがらし
別後 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
蠶豆賣そらまめうりの來る頃は既に過ぎ去り、青梅を賣りに來るにもやゝ遲く、すゞしい朝顏の呼聲を聞きつけるにはまだすこし早くて、今は青い唐辛たうがらしの荷をかついだ男が來はじめる頃だ。住めば都とやら。
短夜の頃 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)