唐桟縞とうざんじま)” の例文
物干の間からのぞいて見ると紺の股引ももひき唐桟縞とうざんじま双子ふたこの尻を端折り、上に鉄無地てつむじ半合羽はんがっぱを着て帽子もかぶらぬ四十年輩の薄い痘痕あばたの男である。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
つたは、旅汚たびよごれのした櫛巻くしまきに、唐桟縞とうざんじまの襟つきを着て、黒繻子くろじゅすの帯をはすむすびに、畳へ片手を落として、ぺたんと横坐りにすわっている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年はどちらも三十四五であろう、二人とも黒っぽい紬縞つむぎじま素袷すあわせを着、痩せた男のほうは唐桟縞とうざんじま半纒はんてんをはおっていた。
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
わたしは果してわたしの望むが如くに、唐桟縞とうざんじまの旧衣を脱して結城紬ゆうきつむぎ新様しんように追随する事ができたであろうか。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
派手な色の長襦袢ながじゅばんの上に、男物のような唐桟縞とうざんじま半纒はんてんをひっかけ、鴇色ときいろのしごきを前で結んでいた。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、側にいる唐桟縞とうざんじまの女をみて
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南向の小窓に雀の子の母鳥呼ぶ声しきりなり。梯子段にれやら昇りきたる足音聞付け目覚めさむれば老婆の蒟蒻取換へにきたりしにはあらで、唐桟縞とうざんじまのおめし半纏はんてん襟付えりつきあわせ前掛まえかけ締めたる八重なりけり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)