哄笑こうせう)” の例文
振事が眞面目であれば眞面目であるほど、人々の哄笑こうせうは、潮が去來するやうに、夜の空氣と、囃子方はやしかたの鳴物を壓して、どつ、どつと波打ちます。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「棄てる神あれば拾う人間あり、さ。だから人間会が必要なんだよ。」とY君は自分の諧謔かいぎやくに、自ら満足して又哄笑こうせうした。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
わらひは量的に分てば微笑びせう哄笑こうせうの二種あり。質的に分てば嬉笑きせう嘲笑てうせう苦笑くせうの三種あり。……予が最も愛する笑は嬉笑嘲苦笑と兼ねたる、爆声の如き哄笑なり。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
我、悪謔一番して曰く、しかり、彼等は少なくとも今の独逸人よりは偉大なり。彼は苦笑しぬ。我は哄笑こうせうしぬ。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
早くも「中止」の一喝いつかつひしことなりとぞ、是れには二階の左側に陣取れる一群の反対者も、手をつて哄笑こうせうせしにぞ、警視はほゝふくらしてばし座りも得せざりしと云ふ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これらの対話は、聞耳を立ててゐたヒステリーの牛太郎の女房が、次の爺さんの述懐と婆さんの同情と共に、みんなに披露して、哄笑こうせうしたのであるが、何もをかしがることはないのである。
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
漠雲の中哄笑こうせうする、目に見えぬものは神である。
象徴の烏賊 (新字旧仮名) / 生田春月(著)
哄笑こうせう
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
それはまるで腹の底からこみ上げて来る哄笑こうせうが、のどと唇とにかれながら、しかも猶可笑なほをかしさに堪へ兼ねて、ちぎれちぎれに鼻の孔から、ほとばしつて来るやうな声であつた。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
道化の權八はその哄笑こうせうの大波を享樂するやうに、ニヤリと笑つて
一座ふたゝ哄笑こうせう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それが云はせたさに、わざわざ念を押した当の利仁に至つては、前よりも一層可笑をかしさうに広い肩をゆすつて、哄笑こうせうした。この朔北さくほくの野人は、生活の方法を二つしか心得てゐない。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)