哀訴あいそ)” の例文
しか方法はうはふもないのでかれ地主ぢぬし哀訴あいそして小作米こさくまい半分はんぶんつぎあきまでしてもらつた。地主ぢぬし東隣ひがしどなり舊主人きうしゆじんであつたのでそれも承諾しようだくされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから以来というものは、一日に何回となく丘田医師のもとに哀訴あいそを繰りかえさねばならなかった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは哀訴あいそするように両手を老人ろうじんに出した。それからバルブレンにも出した。けれども二人とも顔をそむけた。しかも、老人はわたしのうで首をつかまえようとした。
田万里の哀訴あいそを取り上げて老中に取り次ごうとする者のないのは、かの祖父江出羽守というのは、大老中良井なからい氏の縁続きになっておりますので——それで、きゃつ出羽め
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この哀れな父を許せ! 父の生活を理解してくれ——いつの場合でも私はしまいにはこう彼に心の中で哀訴あいそしているのだ。涙で責めるな!……私はまたしてもカアッとしてしまった。
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
たまりかねて、市十郎は、哀訴あいその手を振りながら、眼で、奥の部屋をさした。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
富士男はその眼に熱火ねっかのほのおをかがやかして、哀訴あいそするようにいった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
もとより私は、東京を離れた瞬間から、死んだふりをしているのである。どのような悪罵あくばを父から受けても、どのような哀訴あいそを母から受けても、私はただ不可解な微笑でもって応ずるだけなのである。
玩具 (新字新仮名) / 太宰治(著)
哀訴あいそもし、懇願もして、どうにかして、生きのびさせて貰おうと、あがきまわるに違いない——それを眺めて、存分に、せせら笑ってやろうともくろんでいたのが、相手が、落ちつき払っているので
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
神へ悲しい哀訴あいその手をあげた
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
それでいて、結局最後に君江は金の機嫌を取り結ぶ——というよりも哀訴あいそすることになるのだった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、彼は、天子の寵をたのみ、袞龍こんりゅうの袖にかくれて哀訴あいそした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大統領は、あえぎながら、金博士の胸倉むなぐらをとって哀訴あいそした。
諸人は哀訴あいそ百拝して
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、うしろを向いて、おろおろごえで哀訴あいそした。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、哀訴あいそした。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とドクトルは柄にもなく哀訴あいそした。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)