和泉屋いずみや)” の例文
念のために下谷へ引返して、徳蔵稲荷の氏子うじこ総代——和泉屋いずみやという町内の酒屋の主人に逢って訊いてみると、思いも寄らぬ新事実が挙がりました。
こう合い槌を打ったのは、彼女にとっては旦那でもあり、且つは嬉しい恋人でもある、魚屋の和泉屋いずみや次郎吉であった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
和泉屋いずみやの若旦那も、あれでまあうやらこうやら名取りになったようなわけで、まずあの人が肩を入れたからこそ、へっへ、あれだけの顔が揃ったというもの
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
古いきりの机がある。本が置いてある。そのそばには弟子たちが集まっている。馬籠本陣の子息むすこがいる。中津川和泉屋いずみやの子息がいる。中津川本陣の子息も来ている。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
求馬はその頃から人知れず、吉原のくるわに通い出した。相方あいかた和泉屋いずみやかえでと云う、所謂いわゆる散茶女郎さんちゃじょろうの一人であった。が、彼女は勤めを離れて、心から求馬のために尽した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころ本芝四丁目鹿島明神かしまみょうじんの近くになだの出店で和泉屋いずみやという大きな清酒問屋があった。召使の二、三十人も置いてたいそう裕福な家だが、土間の一隅で小売りもしている。
それは日本橋白銀町しろがねちょうの、和泉屋いずみや徳兵衛という質両替商で、四十一歳になる妻女が中風になり、半年ほどまえから診察にかよっていたのだが、去定は例のように高額な薬礼を取ってい
右側はいぬい(煙草屋)、隣りが和泉屋いずみや(扇屋)、この裏へ這入はいると八百栄やおえい(料理屋)それから諏訪町河岸へ抜けると此所は意気な土地で、一中いっちゅう、長唄などの師匠や、落語家では談枝だんしなどもいて
お作を周旋したのは、同じ酒屋仲間の和泉屋いずみやという男であった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
中津川の和泉屋いずみやは、半蔵から言えば親しい学友蜂谷香蔵はちやこうぞうの家である。その和泉屋が角十にかわって問屋を引き受けるなぞも半蔵にとっては不思議な縁故のように思われた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
和泉屋いずみやさんが、お居間でお帰りをお待ちでございます。」と言った。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
和泉屋いずみやという金看板が、風にきしんで、鳴っていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
吉左衛門の心配は、半蔵が親友の二人ふたりまでも京都の方へ飛び出して行ったことであった。あの中津川本陣の景蔵や、新問屋和泉屋いずみやの香蔵のあとを追って、もし半蔵が家出をするような日を迎えたら。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)