呼捨よびすて)” の例文
をんなは命辛々からがら迯了にげおほせけれども、目覚むるとひとし頭面まくらもとは一面の火なるに仰天し、二声三声奥を呼捨よびすてにして走りでければ、あるじたちは如何いかになりけん、知らずと言ふ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
玉木さんは眼に見えない昔の士族の階級を今もなお保存するかのように、真勢、真勢と呼捨よびすてにした。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おのれじじいめ、えせ物知ものしりの恋の講釈、いとし女房をお辰めお辰めと呼捨よびすて片腹痛しとにらみながら、其事そのことの返辞はせず、昨日頼みおき胡粉ごふん出来て居るかと刷毛はけ諸共もろとも引𢪸ひきもぐように受取り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかるにお嬢様は此のお國を憎く思い、たがいにすれ/\になり、國々と呼び附けますると、お國は又お嬢様に呼捨よびすてにされるをいやに思い、お嬢様の事をあしざまに殿様に彼是かれこれ告口つげくちをするので